いきなり100%なんて目指さなくていい:アバウト原理(TRIZの発明原理16番)
TRIZでよくつかわれる手法「40の発明原理」について解説するシリーズの4回目です。
問題は「あちらが立てばこちらが立たず」という矛盾があるから解決が難しい。
しかし特許を分析した結果、そういう矛盾を解決するために考えるべき40種類のヒント集を発明原理(Principles)といいます。
今回は、その中の16番目の「アバウト」原理について解説します。
「アバウト原理」は英語で「Partial or excessive actions」です。直訳すると「部分的なもしくは過剰な作用」という感じですね。
「いきなり完璧なものを求めなくても良いのではないですか?」という問いかけだといえます。
TRIZでは、
「指定された解決法で100%の効果を獲得するのが困難なときは、同じ解決法でその程度を「もう少し小さく」または「もう少し大きく」する。これにより、問題をかなり容易に解決できることがある。」
と解説されています。
例えば、プラモデルに色を塗ってより臨場感(リアリティ)を出そうとします。
限られた狭い範囲に「完璧に」色をのせるのはとても難しい。
どうしてもはみ出てしまう部分ができてしまいます。
であれば、
大体のところの色を塗ってから細かい所を完成させることはできないか。
もしくは、
適当に色を塗ってもその範囲からはみ出ないようなことはできないか。
という問いかけだという事です。
プラモデルを作る人なら誰でも知っていますが、「マスキングテープ」はそもそもそういう塗装範囲を限定する(マスクする)ために開発されたものですね。
決められた範囲からはみ出ないようにする工夫もそうですが、まずは「はみ出させておいてから削る」というやり方もあります。
接着剤をつける時には、たくさんのノリをつけておき、はみ出たところをヘラで削りますね。
そのイメージはこんな感じなのですが伝わりますか?(汗)

私は仕事柄、いろいろなセミナーをやります。
時間も対象者もいろいろで、それぞれにカスタマイズしながら対応する毎日です。
これを読んでいる皆さんの仕事もそうだと思います。
日々いろいろな事に対応しながら進める。
その時、「すべてを一人で100%に仕上げてからしか提出できない」とすれば何も進める事はできないですね。
まずは自分で「8割方できたかな」というところで信頼できる誰かの意見を聞いて最後を詰める。
もしくはその時の自分で「とりあえず詰め込むだけ詰め込んだ」資料を作ってから信頼できる人の意見をもらって減らす。
いずれもアバウト原理的な考え方です。
例えば、エンジニアリングであれば、
・オーバーシュートを許容する。
・1次遅れ系を許容する。
・範囲を保護する。
・はみ出たものを取り除く
という表現です。
例えば、非エンジニアリングであれば
・仕事を8割完成させたら誰かの意見を聴く。
・その時の自分なりのてんこ盛りの事をしてから他人の意見を聴く。
・やってみてから考える。
・走りながら考える。
・これ以上はできないと感じたらそこでとりあえずやめる。
・たくさん作ってから減らす。
今あなたが改善しようとしているシステムは「いきなり100%を達成する」よりも「段階的に100%を達成する」方が良いのではありませんか?
TRIZはあなたが抱えている問題を解決するヒントを与えてくれますよ。