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  • 執筆者の写真桑原

ワクチン注射器についてTRIZで考えてみました。

いよいよ日本でもコロナワクチンの接種が始まったが、注射器の問題がクローズアップされています。


それは、ワクチン注射器の先端の空間に液体が残ってしまうので、6人に摂取できるはずが5人にしかできないという事です。






N社はこの問題を解決する注射器を持っており、それを増産するそうです。

それはピストンの先端に突起を設け、空間を埋めてしまうというものです。




この場合、確かに残留液体の問題は解決できそうだが、ピストンの形状が複雑になるので加工工数が掛かってコストアップしそうです。


このことについて最初に浮かんだ矛盾は、「注射器の先端の残留液体量を減らすために、ピストンの先端に突起をつけると、加工が複雑になる」です。


そうすると、ピストン先端に突起のついた注射器が改善のスタートになるので、少し違和感がでます。できれば今の注射器で「先端に残留液体が残る」という問題を再度観察(といっても現物はないのでイメージですが…(汗))しました。


ピストンを押し切ったときのイメージから、注射器シリンダーの底に残留する液体の体積とピストンや注射器の底の形状の矛盾ではないかと考えてみました。


新たに定義した矛盾は「平らなピストンの注射器を使うと注射器の底に液体が残ってしまう。」となり、改善したい特性は「(ピストンの)形状」、悪化する特性は「移動物体(注射器の残留液体)の体積」になります。


矛盾解決マトリックスでその交点を見ると以下の5つの発明原理が出てきました。


1. 曲面原理:まっすぐな形状を円や球の形状にする

2. 非対称原理:バランスを崩して非対称にする

3. ダイナミック性原理:いろいろな物への対応可能な柔軟性を高める

4. 局所性質原理:一部の性質(硬さや密度や濃度など)を変えてみる

5. 入れ子原理:アンテナなどの入れ子構造にする。


5の入れ子原理は、N社が開発した「突起のあるピストン」のアイデアにつながりそうですね。


以下、この記事を書く程度のスピードで思いつくままにアイデアを書いてみると…

・注射器の底とピストンを丸くする。 →球状を一つではなくて複数にするとどうかな?



・円状ではなく三角形とか五角形とかの注射器にする。 →針が中心にあるけど、あえて中心をずらしてみたらどうだろうか?

・柔軟な材質、変形する材質、やわらかい材質で注射器を作る。 →歯磨き粉のようなシリンダーにしてみたら?



・液体を二層構造にしてピストン側にはバッファの(ワクチンでない)液体を入れる。 →液体ではなく何か変形しやすいものでも良いのかもしれない。

 →アキュームレータのようなものでも良いかも。



・ピストンの先端に突起をつけるのではなく注射器シリンダーの底に突起をつける

 →車のダンパーのように2重構造にするとどうだろう?


まず、新聞に出ている程度の直感的な矛盾から素人程度に発想してみましたが、なにか新しい注射器へのヒントになるように感じませんか?


アイデアを場当たり的に発想するのではなく、「矛盾」という切り口から考えるとより具体的なアイデアにつながりそうだということをわかっていただけるのではないかと思います。



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さて、これ以下は追記と補足です。


本来であれば、「なぜ先端に液体が残留するのか?」という問いを立てて、その原因を分析したあと、根本原因についての矛盾を定義してもっと多くの具体的な視点からアイデアを発想するのが良いやり方です。


例えば、素人的ななぜなぜ分析ですが以下のようになります。


注射器の先端に液体が残ってしまう。

 なぜ?→ 注射器の底に空間ができるから

 なぜ?→ 注射器シリンダーの底と注射針の根元の空間が大きいから

   なぜ?→ 注射器シリンダーの先端部分が長いから

    なぜ?→ 注射針を取り付ける部分が長いから

  なぜ?→ 注射器シリンダーの先端部分の直径(内径)が大きいから

    なぜ?→ 注射針を取り付ける部分が太いから

     →理由:注射針の取り付け強度を確保したいから?

  なぜ?→ ピストンの先端が注射器のそこまでいかないから

   なぜ?→ ピストンの先端が平らだから

   なぜ?→ ピストンと注射器の底との隙間が大きいから

「注射針を取り付ける部分が太いから」を根本原因の一つとして矛盾を考えると、「注射針の取り付け強度を確保するためにシリンダーの底の部分は太くなければいけないが、そうするとシリンダーの底の空間が大きくなる」という感じです。


強度ではなく、材料の量が増えるという問題なのかもしれませんが、そのあたりは専門の方と一緒に考えなければならない点なので、ここではそこまで踏み込みません。


いずれにしても、なぜなぜ分析で得られたいくつかの根本原因で矛盾を作り、そこを起点にしてたくさんのアイデアを生み出して、それらの選択と結合を繰り返すことで良いソリューションを生み出していくのが実際の問題解決へ向けたやり方です。


興味やご関心のある方は「創知堂」までお問い合わせください。


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